社長失格
とある人に薦められて、読みました
「社長失格」
・・・ITベンチャー企業を立ち上げながらも、人材流出、資金の凍結により自らの企業が黒字倒産、自己破産するまでの話。
大変ためになった。
特に、次の5つ。
(1)間接金融(銀行の融資)ばかりに頼らずに直接金融(投資)を入れる。そうしないと、メインバンクの融資引き上げで一気に資金凍結する。
(2)自分の特性(性格)を良く認識する。この社長の場合、起業家としての性格が強かったので、継続的に、リスク回避しながらじっくりと経営する性格ではない。そう認識したならば、苦言を呈してくれるパートナーを近くに置くか、社長交代を早々に意識すること。
(3)資金凍結したならば、早い段階で最悪の事態を想定し、M&Aで買ってくれる企業を探すことも考慮する。
(4)自己イメージの演出の大切さ。結果的に経費節減になった事務所移転も、「見た目が前の場所より豪華」であったり、自己資金で買ったフェラーリがあだになって「豪遊社長」のイメージがついてしまったり。物事には道理があるが、必ずしも論理的に正しいことが通る訳では無い。自己イメージをうまく演出し、リスクを避けること。
(5)同じ理由で、「人は合理的には動かない」。感情で動く。例えば、長い間右腕として活躍した経営幹部を差し置いて、外部から登用した鳴り物入りの新人をイキナリ海外支社長に据えて、右腕幹部が退社してしまうという事故。これは結果としては、右腕幹部が辞めた場合のリスクも考えると合理的ではない選択。
こんなかんじ。
本を読んで得られた教訓として3つ。
(1)人間は論理では動かない。感情で動く。
(2)そのための自己イメージの演出と、人の感情を考えた人事配置は欠かせない。
(3)周りの人間が感情で動いた結果の事態を想定して、「その結果」どうなるかまで考えて、本当に一番良い選択をする。
この3つを意識して動くことが、本当に人生で「結果として合理的に」動くことのできる人間なんだなと思った。
読んでる途中までは、経営は合理的に生きちゃダメなのかなと思っていたが、読み終わって反省してみると、"結果まで考えさえするならば"やはり合理的でいいんだなと思って少し安心した。
この著者は、自分の枠で合理性を追求したんだけど、周りの人間まで巻き込んだ本当の意味での合理性のある経営はできなかったんだと思う。
即ち、資金の調達方法について知らないから→資金戦略の失敗して→資金繰りにきゅうきゅうになっちゃって→人間心理の把握ができなくなって→コケちゃって→ますます資金繰りができなくなって
みたいなループを描いて徐々に堕ちていったように思う。
その危うさのサインは、割と初期の、まだ経営の順調な時から出ていたように思う。
即ち、「資金繰りがあんまりうまくいってないなぁ」→「でも事業アイディアは素晴らしいよね」→「まぁいいやぁ。俺スゴい経営者だし、こんな凄い事業だから後から融資してもらえるだろ。」→「いっちゃえー!」
という流れ。これが危険サイン。
本当は、ごくごく小さな事業を完璧に育てておいて、穴が十分少なくなってから拡大しないと、後から凄い亀裂になって、それがやがて企業を破壊するんだろう。
世の中のベンチャーのほとんどがコレでコケているようだ。
そこで、事業はゆっくり成長させながら、そのつど"亀裂"を修正し、自分自身も成長する-
これが正しいベンチャー企業のあり方なんだろう。
ただし、それは「急成長する」というベンチャー企業の定義に反する。理由の一つは、成長こそがベンチャーのガソリンみたいなものなので、ゆっくり成長していられない。もう一つの理由は、ライバル企業が存在するから、早くしないと時期遅れになってビジネスモデルが陳腐化する。
だから、急成長するんだけども、①地雷を踏まないようにその都度発生する問題に対処しながら、②一方で問題が発生しないような組織を作りつつ、かつ③資金繰りをうまくやる。
この3つの柱に対する意識の分配が、非常に難しいんだろう。そして、自分自身の人間力がそれができるところに達するまでは、起業しちゃいけないんだと思う。
それが知れただけでも貴重な一冊だった。
ただ、やってみなくちゃ、いつまでもそのステージに行かずに、一生一般人として終わってしまう危険性もあるけども。
<上記の本の続編>
今度は、「ベンチャーとして投資を得るにはどうしたら良いか」について述べた本。
こちらも、日本のベンチャー起業の実際を知るのにためになった。
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