外資系コンサルのグループディスカッション(GD) - 後悔するGDはするな
今回のメモは、「グループディスカッションはどうしたら良いか」「見積もりではなく、経営の相談に乗るGDはどう進めたら良いか?」について記載しています。内容には多分に筆者の主観が入っていると思うのでご注意下さい。
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■GDの詳細
1.進行の方法について
・・・GDの進行について、失敗したなぁと思ったので記します。こちらはだいぶネガティブです。これだけ落ちる要因があったということで、みなさんは同じ失敗をしないようにしてください。
2.議論の内容について
・・・GDで出されたケースのお題と議論の内容について書きます。未熟な内容ですので参考になるところだけ取り入れてください。
1.進行の方法について
筆者がGDが終わった当日、mixiに書いた日記です。そのため口語調で筆者の心境を語ったりしていますが、「こういう気持ちだったんだな」程度にとって頂ければと思います。
補足:以下のGDは議論の内容についてはおいておいて、進行の上で悪かった点を反省しています。
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某外資コンサルのGD。
筆記試験を終え、先ほど京大会館にて。
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GD40分。5人。
与えられたお題について個人で考える20分+そのお題についてグループディスカッション20分。
お題は
「
あなたはコンサルタントです。料理店の女将から相談を受けました。
『私の店は独自のルートで和牛を仕入れ、料理長である亭主の創作料理により少人数のお客様に振舞うサービスを自慢としており、芸能人からもご贔屓にしてもらい、毎日10組限定のサービスを提供している。
おかげさまで大盛況を頂き、半年先の予約もいっぱいである。このたび店舗の拡大を検討している。銀行に融資を相談したところ、上限は設けないからこの機会に拡大してはどうかといわれた。
経理を担当している長男はすっかり舞い上がってしまって、もっと若者にサービスを知ってもらいたいと言って店舗拡大に乗り気である。しかし私は何か心配で・・・。拡大するとしたら、どのような点に気をつければいいのでしょうか。』
そこでコンサルタントとしてどんなアドバイスをするべきでしょうか。
」
20分間考えて、グループディスカッションスタート。
A君、B君、C君、Dさん、そして僕の5人。
それぞれ2分ずつくらいで、考えた案を交代で発表した。
5人発表した時点で、10分。
全員を交えてのディスカッションスタート。
相手の意見を聞きながら進めてみて何となく雰囲気が「積極的な意見があまり出てこず、お互いに様子を見ている」感じに。 「ヤバいな」という思いがよぎる。
「意見が出てこないし、まとまらないな、こりゃ(ヘタしたら全員落ちるな)。」
自分が一人で全部言っても仕方ないというか、ディスカッションにもならないし。
それは避けたい。
そこで、因縁の(?)ポジション
筆記
を買って出る。
とりあえず争点として挙がっているポイントを書き出した。
そして「こんな感じだけど、どう?」と振る。そうだね、という反応はあるし、そこそこ付け加えるための発言も飛んでくる。筆記をやる前よりは活発だ。しかし、ところどころ挟まれる一瞬の沈黙。(←これがマズいんだよなぁ、様子見ている感じ。)
進めていくと、A君からとある意見を得た。 ここで僕は、初めて人の意見に反対の意見を持った。
確かにそうだ。そうかもしれない。しかし、それは僕には大事なことには思えなかった。 それを言うと、消極的な議論がますます消極的に・・・いやいや、ここは言おう。(←こういう葛藤を含めて、何となく言いたいこと完全に言わなかったこと が、僕の中でGDが終わった後、スッキリしない原因となっている。)
そこで、僕の意見を示す。A君と議論が始まる。
ここで、あとの3人(B君とC君とDさん)のうち、B君は以前選考会で会ったことのある友達だった。
B君は後から聞いたが、某外資銀行の内定をもらっており、今日は遊びに来たということで発言量は多くない。
C君、Dさんは意見も言うけれど、どちらかというと僕とA君の進行を見ている感じ。
そういうわけでA君と僕の2人の発言量が多くなった。
ホワイトボードの前で彼の意見と場の意見を整理。
僕も発言はするが、「一人で演説してる」みたいな状況は避けたかった。発言を一緒にしてくれる人(同じ方針を持つ人)がいないのでやりづらかった。
そうこうして、終了間際。
そこで言いたくていえなかった自分の意見を少し付け加えて、終了。
非常に中途半端なGDとなりました。
僕はこれまでのGD練習では前に出すぎ、と反省していた。
しかし、これは逆に自分の言いたいことぜんぜん言えてないし、これで落ちたら
『もっと言いたいことあったのに~!!』
と、1日後悔するGDになったに違いない。
GD受けたほかの友達にも電話をして意見を仰いだところうちのグループもそんなんだったよ。よくわかんないよね。という結論になった。
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こういう葛藤の場面では、個人の性格が出てくると思う。
GDにしても、本来僕は突っ込んで意見を出していくタイプなのに、意見の調整役の経験を積んだりして。
今日意見が出てこなかったことにしても、僕のGDの進行のやり方というかそんなのではなく、表情や立ち振る舞いを含めた「性格」や「人間性」が足りてなかった訳だし。
それは、GDの練習とかで補うようなものでもないと思う。
これでいけたらいいけど、そうでなかったら後悔するだろう。今日のはそういうシチュエーション。
GDは、20分という短い時間なので、アピールできるポイントはわずか。その時間を大切にしたい。(以上2008年2月08日の筆者のmixi日記から抜粋)
2.議論の内容について
以下の流れで進めました。
●目標の定義
●状況の整理(関係者の利害)
●状況の整理(店の現状)
●依頼に応える
以上について順番に書きます。
●目標の定義
最初に考えければいけないのは、依頼者が何を達成したらコンサルティングを成功と考えるか、である。
それを決めるには、依頼者が何を求めているかということを明らかにする必要がある。お客は、従来のお客(大人)と、長男がこれからターゲットとしたいとするお客(若者)に分ける。適当に仮定してみよう。
それぞれの関係者が譲れないものは何か?
・女将→お客(大人)へ気持ちよいサービスを提供し喜んでもらう
・長男→お客(若者)に美味しい料理を味わってもらう。
・主人(料理長)→老舗の味を出せる店の「誇り」
つまりコンサルティングの成功とは、これらの依頼者にとって大事なものを維持しながら、同時に家族に経済的なメリットがあればいいということになる。
ここで考えたいのは、それぞれ「家族の絆」をどれくらい大事にしたいものと考えているのだろうか。利害が異なる方針をそれぞれが示した場合、対立し家族の協力関係が崩れてしまうかもしれない。
これらを念頭におきながら、次のステップに移る。
●状況の整理(関係者の利害)
ここでは利害関係者の意思の整理をする。上記依頼者たちを取り巻く人たちが求めるものは何か。適当に仮定してみよう。
・従業員→安定した給料、一流の店に勤めているというプライド、料理やサービスのスキルを得ること
・お客(大人)→「あの店なら大事な客人を連れて食べに行っても大丈夫」という「安心感」
・お客(若者)→普段は味わえない味とサービス
・銀行→大量に貸し付けて安定した利子を得ること
これらの思惑が錯綜しているので、依頼を達成するには単純な問題ではなさそうだということが分かる。
ここまで整理したところで、いよいよ依頼者の依頼に応えることにする。解決のステップは以下になりそうだ、ということが分かる。
1.女将の「不安の正体」を明らかにする。
2.仮に「店舗を拡大する」と仮定した場合、1.で明らかにした懸案事項はどのようになるか検討する。
この「不安正体」の整理は、今回の依頼でもっとも大事な部分でしょう。
●状況の整理(店の現状)
依頼者の発言からも分かるとおり、現状では常連客が定着しているようである。この常連客が求めているものが店舗を拡大しても提供し続けることが可能なのか、それを検討してみる。
客が求めているもの
・サービス
・料理
・ブランド
・サービス(女将による丁寧なサービス。きっと客は自分が大事にされている、という思いを受けて帰っていくことだろう。だからこそ次も来よう、という気になるのだろう。)
・料理(店長の"創作"料理がウリの和食料理。他では食べられないその料理を求めて客は来るのだろう。)
・ブランド(一般の客には「常に予約いっぱいの店があるらしい」「芸能人も贔屓にしているらしい」といった、「店のサービスはなかなか得がたいものである」というイメージが定着しているだろう。)
上記3つは拡大路線の際消失してしまわないのだろうか。
●依頼に応える
さて、ここで仮に「店舗を拡大する」とした場合の、成功の可能性を考えてみる。上記で整理したことより、拡大が成功するのは、以下の3要素が変わらずにいるときであるとする。
・サービス
・料理
・ブランド
それぞれについて懸案事項を列挙してみる。
・サービス
女将が従業員をしっかり教育しているからサービスが行き届いているのかもしれない。また女将が出迎えてくれるから、この店なら大丈夫という「安心感」のよ うなものがこの店のウリなのかもしれない。だからこそ芸能人が定着し、そして常に予約がいっぱいだからこその「人気が故の人気」が人を読んでいるのかもし れない。マニュアル化して拡大できるサービスなのか、拡大した店舗に融通するだけの人員はいるのか。
・料理
料理長の創作料理がウリならば、そういったことは継承されるのか。料理長以下の教育はどうなっているのか。料理人は罵倒してついて来いと教育する形なの か、それとも裁量を与えて部下を教育する形なのか。また料理長の"創作料理"は「マニュアル可能」なのか、あるいは料理長がいなければなんともならないの か。
また、独自のルートで仕入れた和牛というが、和牛は狂牛病にも見られたとおり風評の影響を受けやすいし、また価格にも変動が大きい。得意先のルートは拡販可能なのか。
・ブランド
先にも言った「芸能人などの富裕層」を対象として贔屓にしてもらっている安心がある。お客は少なからずそうした安心感を求めているに違いないが、若者向け にターゲットを変更したときのイメージはどうするつもりか。長男の言う「若者向け」のサービスというのは、「価格を下げる」ということだろうか?ならばそ の店は、価格を下げた分料理やサービスの質を下げなければならないだろう。
あるいは、価格も下げず、提供するサービス・料理の内容を下げないつもりだろうか?従来どおり富裕層が客として来るだろう。
ま た、価格を下げずに若者をターゲットとするということについて、提供するサービスや料理の内容を若者向けにするということだろうか。そんなことは可能だろ うか。可能だとしたらどのような内容で、どういったイメージになるのだろうか。そのイメージは従来の店のブランドと同一ブランドとして扱うのだろうか。同 一として扱うとしたら、同一ブランドでサービスや料理の内容が違うということは、客の混乱を招かないか。あるいは別ブランドとして扱うのだろうか。別のブ ランドを立ち上げる意味はあるのか。半年先まで予約がいっぱいなほどならば、あえてターゲット層を広げる理由はあるのだろうか。
などなど、心配事はいろいろある。
* *
ここまで検討したところで終了。
実際は、最初から
●目標の定義
●状況の整理(関係者の利害)
●状況の整理(店の現状)
●依頼に応える
というフレームワークにしたがって順に検討したというより、議論は行きつ戻りつでした(今、説明するためにいくつかのセクションに分けたらこうなりました)。
上記は、GDを終え、先輩からアドバイスをもらってブラッシュアップしたものです。
最 初の20分の個人で検討する段階で考えた構想は、方針こそ変わらないもののもう少し簡素なものでした。アイディアは紙に書き付けておきました(実際はマトリックスを使ったり、単語のみを書き付けたりして文章化はしていません)。それは、GD終了後試験管に回収されていましたので、思考のプロセスは見て頂いたようです。
あるコンサルタントからの手紙
*去年11月
コンサルティングファーム「ADL」の採用担当者「Fさん」にOB訪問、東京で会う。
朝8時から10時まで。
「南場智子さんはなぜマッキンゼーのパートナー(コンサルの最上位職)をやめ、事業を起こしたか」
というディスカッションを行った。
*
僕は当時、新卒でコンサルになることに迷いがあった。
南場さんの著作に書いてあった次の文章を読んだからである。
「私はマッキンゼーのパートナーとなって一流のコンサルになった。しかし私は真の意味で超一流のコンサルにはなれない。なぜなら、経営者の悩みに共感できないからである。だから事業(DeNA)を起こし自ら経営者となった。(コンサルティング業界大研究より)」
コンサルタントは事業を経験してからでないと、本当の一流とは言えないのか?
この問が本当だとすると、最初は事業会社なりでそれなりに責任を負って、その後にコンサルになるのもアリなのではないだろうか、と僕は考えていたのである。
*
その迷いを、Fさんにぶつけてみた。Fさんは、僕の考えをきれいに整理してくれた。Fさんが構造化した僕の考えとは、
「南場さんは
①自分が挫折した経験が無いから→②経営者の苦しみを真の意味で共感できずに→③自分は一流のコンサルではあるけど、『超一流のコンサルにはなれない』と悟り、マッキンゼーを退社。そしてDeNAを立ち上げた。
」
だと。
しかしFさんは違った仮説を示した。
「南場さんは
①経営者などのトップ層に提案をするが、年俸制の雇われ経営者は、必ずしも事業の命運に自分の人生を共にする覚悟があるとは限らない場合がある。つまり経営者は企業の将来の全責任を負っているとは言えない場合があり、そうした経営者のコンサルを請け負うこともあり→②そうした場合、責任を負えない経営者というものの理解ができず、どうしたら本気にさせられるかも分からず、コンサルとして本気で経営を改善する覚悟でやっている南場さんは共感などできようはずもなく→③自分は一流のコンサルではあるけど、『超一流のコンサルにはなれない』と悟り、マッキンゼーを退社。そしてDeNAを立ち上げた。
」
のではないかと。
実際のコンサルの実感としては後者が妥当なのではないかと。
そして僕の
「事業を起こした経験など無いまま、コンサルになっていいのか」
という問いには
「少なくとも今やりたいんだったら、やるべきだ」
という答えをくれた。
そして東京は元住吉のスターバックスを後にする。土曜日で彼は仕事が休み、この後息子と一緒に遊ぶ約束をしているから失礼するといって分かれた2時間ばかりの間の出来事であった。
*
密度の濃いディスカッションを終え、元住吉駅のカフェのベンチに座って会話を反芻していると、Fさんの携帯電話から電話がかかってきた。
「さきほどの話だけど、うまく伝え切れなかったのでもう一度伝えておきます。確かに事業の経験がないままコンサルになることは、ポジションが上になったときに相手に本当に共感できるかという問題は残ります。でも、コンサルタントとして一人前になるまでの道は辛く長く険しく、そしてやりがいがある道です。あなたが今コンサルになりたいという気持ちがあるなら、目指すべきだ。」
と。Fさんの後押しによりかなり勇気付けられた。
それ以降、2時間でもお話をしていただける場が持てるならば、たとえそのためだけであっても京都から東京までOB訪問は惜しまないことを決めたんだ。
*
ADLのセミナー、説明会に参加し、そしてエントリーを通過。先々週、10人でGDを行ってきた。
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GDの合否は10日間連絡が無かった。同じ日に受けた友人は既に合否の通知が来ていた。
シビレを切らした僕は以前に「またいつでも相談があれば連絡ください」というメールをくれていたFさんに返信した。
「よかったらまたお話したいです」
と。
その2時間後、(Fさんからではなく、ADL人事部から)不合格通知が到着した。
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やはり落ちた人に構っている時間はないのかな、と少し寂しく思ったが、最後まで僕を成長させてくれたFさんにお礼のメールを書いた。
***********
Fさん
京都大のキャプテンです。このたびは採用プロセスに参加させて頂いてありがとうございました。(中略)そうしたコンサルであられるFさんは僕の中でコンサルの一人のロールモデルとして今まで目標となってきました。残念ながらADLは内定できませんでしたが、他のコンサルを視野に入れつつ、自分の活躍できる場所を探したいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
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翌日Fさんから返信が届いた。
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キャプテンさん
ご連絡ありがとうございました。
ご返事が遅くなり申し訳ありません。
弊社としては、今回は残念な結果となってしまいましたが、ぜひ今後もキャプテンさんが自分を発揮できる職場を目指し 就職活動に邁進していただければと思っています。
(中略)
その意味で、もし私にできることがあれば、コンサルとして働く一先輩として、キャプテンさんにお話させていただければと思っています。と言うより、せっかく知り合えたのですから、これからもぜひお付き合いいただきたいと思っています。
今週こちらにこられているようですが、木曜・金曜の夜はどちらでどのような予定になっていますか? 正直、最終報告を来週に控え、お約束はできませんが、もしお時間合えば(作業に目処がつけば)一杯飲みにでもいきますか?
ではでは、とりいそぎですが。
F
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やはり僕のADLへの志望動機となったFさんは、人を育てる意思のある、立派な先輩だった。